採用に関する判例
採用に関する判例としては、
採用を望む応募者が、採用面接に当たり、自己に不利益な事項は、質問を受けた場合でも、積極的に虚偽の事実を答えることにならない範囲で回答し、秘匿しておけないかと考えるのもまた当然であり、採用する側は、その可能性を踏まえて慎重な審査をすべきであるといわざるを得ない。大学専任教員は、公人であって、豊かな人間性や品行方正さも求められ、社会の厳しい批判に耐え得る高度の適格性が求められるとのY社の主張は首肯できるところではあるが、採用の時点で、応募者がこのような人格識見を有するかどうかを審査するのは、採用する側である。それが大学教授の採用であっても、本件のように、告知すれば採用されないことなどが予測される事項について、告知を求められたり、質問されたりしなくとも、雇用契約締結過程における信義則上の義務として、自発的に告知する法的義務があるとまでみることはできない。
とする学校法人尚美学園事件があります。
これは、大学の教授を雇った場合、雇った後に、前の大学でセクハラでクビになった事が分かったので解雇をしました。
それが不当解雇だと裁判になった事例です。
大学側は、教授なので、豊かな人間性や品行方正、社会の批判に耐えられ高度な的確性を求めました。
その大学側の主張は理解出来ます。
そうであれば、採用の時点で、この教授がどの様な人格の持ち主なのかを審査するのは採用する大学側にあります。
告知すれば採用されない事が予測される事項について、告知を求められたり質問されたりしなくても、雇用契約締結課程における信義則上の義務として、自発的に告知する法的義務があるとまでみることは出来ない。
と判示しております。
このことは、簡単に言えば、聞かれないから答えませんでしたというのは充分理解できることですよ、聞かなかったあなたが悪いと言っております。
つまり、うちの会社では、このような人を募集しているという事をできるかぎり明確にした上で、その人物を見定める為に必要な質問をするというプロセスが重要なのです。
面接時のリスクマネジメントという面だけでなく、会社の将来ビジョンに係ってくることでもあり、とても重要なプロセスです。
そのプロセスの過程において、会社にとって納得出来る人物はどのような人なのか、その人は将来ビジョンにどのように貢献してくれる人なのかを明確にして、採用する、そのような会社に良い人材が自然と寄ってくるのでしょうね。
ワークライブバランスを考える
介護事業所は、女性の方が圧倒的に多い職場です。
そこで避けて通れないのが、出産、育児休業です。
介護事業所でも育児休業を取得される女子職員さんが増えています。
ご存じのとおり、育児介護休業法上、職員さんから育児休業や介護給御油の取得を希望されたら会社は拒否することはできません。
よい職員の確保と定着を考えると、どうしても会社の制度として、業務が回っていく仕組みを本格的に考えないといけない時代に入ってきていると思います。
例えば、育児休業についての育児休業規程があるのですが、非常勤職員が育児休業の取得を希望され、会社としては初めてのケースなので、思わず退職して下さいと言ったとします。
その方が労働基準監督署に相談に行かれたら、間違いなく呼び出しされます。
そして、相当きつく注意され、是正勧告されます。
また、育児休業規程を念入りにチェックされ、法違反の部分が見つかると、すべて変更するように指導されます。
特に中小企業にとっては、人手を確保するうえで難しい問題ではありますが、時代的に無視はできませんね。
しかも、そのまま退職されるより、子育てが一段落したら戻ってきてもらったほうが、会社としてもより良いと言えます。
結論としては、求人募集に対して、良い人材が応募してくれる事業所であり続けることとにあります。
特に、非常勤職員の数的確保は非常に重要ですし、働き続けたいと思われる職場と求職応募者が多いことは、同じことですから。
制度としては、
- 短時間勤務制度
- 始業、終業時刻の柔軟な制度
- 有給休暇の取りやすい職場制度
- コミュニケーションの取りやすい職場制度
- 人事評価が訂正な職場制度
- 事業所の方向性が明確な経営計画の周知
などが考えられます。
話しは変わりますが、人事評価制度と記載いたしましたが、人事評価制度も決して大掛かりなものが必要ではありません。
貴所に合った、簡易的(時間がかからず、頻繁にコミュニケーションが取れるもの)でも、やり方によっては、大きな効果を得られます。
このお話しは、また後日させていただきます。
職員さんのプライバシー状況を把握することの必要性
一般的に、職員さんのプライバシー状況を把握することは、個人情報の関係で良くないと言われていますよね。
でも、人で不足が激しい介護事業所にとって、そんな事を言っていられる状況なのでしょうか。
今後、日本の15歳~64歳の人口は、2020年には約400万人、2030年には約1,000万人減っていくと言われております。
非常に残念ではありますが、人口推移ほど、予測が外れる確率は低いです。
400万人は名古屋市が2つ近く消滅するレベル、1,000万人は東京23区+100万人が消滅するインパクトです。
これから切実に問題になると思われるのが介護離職の問題です。
職員の家族構成や状況を把握しておかないと、いつ家族の介護で退社をしたいと言われるかもしれないのです。
介護職員が介護離職するとは、皮肉にも聞こえますが、業種に関係なく、起こり得る問題です。
出産や育児で今までどおり働けなくなることも考えられますが、こちらは、比較的に、事前に把握できますね、しかし、家族の介護に関する問題は、なかなか把握しきれていないのが現状ではないでしょうか。
しかも、介護は育児とは違い、先が読めない、いつ終わるかわからないという特性もあります。
問題解決としては、普段から仕事以外の事を聞ける社風を作っておく事が必要です。
このブログは職員さんの定着を主旨としたものです。
仕事以外の事も普段から聞ける社風にするにはどうのようにしたらよいのでしょうか。
そのような制度を導入することです。
制度というと、きちんとした規程を作成し、相当な時間を使って分析し、失敗のないように緻密に作り上げる、というイメージを持たれるかもしれませんが、そんな大掛かりなものでなくても全然結構です。
たとえば、毎日朝礼で、持ち回りで、近況報告を30秒してもらうということを新たに始めても“制度導入”です。
また、毎日、どんなことでもよいので、同僚に感謝を記載したカードを発行する、など、考えれば小さい制度導入で、大きな効果が得られるものはたくさんあります。
大事なことは、まずは始めることです。
そして、こまめに改善していくことです。
続けることで徐々に変わっていくことを信じることです。
面接のやり方
前回の続きです。
人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地、思想及び信条、労働組合への加入状況、その他社会的差別の原因となるおそれのある事項業務でなくとも、仕事に直接関係のない事までの確認や同意のない検査をする事や、人格やプライバシーの侵害にあたるような項目は、やはり禁止されております。
では、既往歴や現在の疾患を聞くことが、が人格やプライバシーの侵害にあたるのかどうかという事です。
例えば、糖尿病Ⅱ型の方が一日中座りっぱなしの事務職の場合、悪化するリスクが相当高くなると言われております。
その様な仕事で募集する場合、確認しなければならなりませんので、面接時に聞かないといけないということになります。
逆に、聞かずに入社させて、悪化させてしまったら、会社の安全配慮義務違反になる可能性があるためです。
貴事業所において、疾患と仕事内容の関係から、どうしても把握しておかなければならないのであれば、そのことを説明したうえで質問するということとなります。
このような場合は、プライバシーや人格の侵害ではなくて、業務上明確に必要な事です。
介護事業所で仕事をするうえで、仮に、疾患をお持ちの方を採用した場合、配慮しなければならないことを最初から把握しておくことは重要なことです。
また、配慮をしても(または現実的に配慮できないため)その疾患を悪化させる恐れがある場合は、やはり、採用は見送るべきと言わざるをえません。
結論としては、聞き方の問題だと考えております。
また、あまりおすすめできない方法としては、面接前に、質問票を事前に配布しておき、記入していただき、その後に、面接官との面接に臨むというものです。
人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地、思想及び信条、労働組合への加入状況、その他社会的差別の原因となるおそれのある事項業務、仕事に直接関係のない事までの確認や同意のない検査をする事や、人格やプライバシーの侵害にあたるような項目かどうかは、前回の具体的な質問事項を見ていただいてもわかるように、読む人によって、OKとNGとで見解が分かれる質問事項もあるためです。
会社としては、問題がなく、かつ仕事上必要だとの結論で、記載した質問内容であっても、答える方は、その逆の認識をされる可能性があります。
面接時に直接聞いて説明して行うのであれば、このような認識のずれも少なくなるのですが、単なる質問票では、会社の意図はくみ取られなくて、大きな誤解を与えたまま、面接に除くことにもなるからです。
また、質問票を面接官が見ていないところで配布してしまうと、もしかしたらスマホで撮影され、SNSへアップされる可能性もあります。
質問事項が誰が見ても全く問題ない内容であればよいのですが、見る人によっては問題ありと思われる内容が記載されていたら、事業所の信用問題にもなりかねませんね。
現代は、SNS対応も労務管理上、とても重要事項となっております。
一般的に面接時にNGとれている質問事項
前回のブログの続きです。一般的に面接時にNGとれている質問事項は下記のとおりです。
(1)本籍地
- Qあなたの本籍地はどこですか?
- Qあなたのお父さんやお母さんの出身地はどこですか?
- Q生まれてから、ずっと現住所に住んでいるのですか?
- Qあなたの生まれたところはどこですか?
- Q今の所に来る前は、どこに住んでいましたか?
(2)住居とその環境
- Q○○町のどの辺に住んでいますか?
- Q自宅はどの辺ですか?
- Qあなたの住んでいる地域は、どんな環境ですか?
- Qあなたのおうちは国道○○号線(○○駅)のどちら側ですか?
- Qお父さんははじめからそこに住んでいるんですか?
- Qどこから引っ越してきたのですか?
- Qあなたの自宅付近の略図を書いてください?
- Q家の付近の目印となるものはなんですか、バス停はどこですか?
- Q通学は自宅からですか?
(3)家族関係・家庭環境
- Q兄弟(姉妹)は何人ですか。お姉さん(お兄さん)はいますか?
- Q保護者の欄がお母さんとなっていますが、お父さんはどうしたのですか?
- Q保護者の方と名字が異なりますが、どうしてですか?
- Q家族構成を話してください?
- Qお父さん(お母さん)がいないようですが、どうしたのですか?
- Qお父さん(お母さん)は病死ですか。死因は何ですか。病名は何ですか?
- Qお父さんが義父となっていますが、詳しく話してください?
- Qあなたの家庭の雰囲気はどうですか。明るいですか?
- Qあなたの家庭は円満ですか?
- Q親子の話合いは十分になされていますか?
- Q両親(父親・母親)はどんな人ですか?
- Qお父さん、お母さんの学歴は?
- Qあなたの兄弟(姉妹)はどこの学校へ行っていますか?
(4)家族の職業・家庭の資産
- Qあなたのお父さん(お母さん)は、どこの会社に勤めていますか。役職はなんですか?
- Qあなたの家族はどんな職業ですか?
- Qあなたの兄弟(姉妹)は働いていますか?
- Qあなたのご両親は共働きですか?
- Qあなたの家の家業は何ですか?
- Qあなたの家族の収入はどれくらいですか?
- Qあなたの学費はだれが出しましたか?
- Qあなたの家はどれくらいの広さですか?自分の部屋を持っていますか?
- Qあなたの家の耕地面積はどれくらいですか?
- Qあなたの住んでいる家や土地は自分のものですか、借家ですか。部屋数、畳の数はどのぐらいですか?
- Qあなたの家の不動産(田畑、山林、土地)はどのくらいありますか?
(5)思想・信条等
- Q学生運動をどう思いますか?
- Q労働組合をどう思いますか?
- Qあなたの信条としている言葉は何ですか?
- Qあなたは、自分の生き方についてどう考えていますか?
- Qあなたの人生観を話してください?
- Q家の宗教は何宗ですか。あなたは、神や仏を信じる方ですか?
- Q政治や政党に関心がありますか?
- Qあなたの家庭は、何党を支持していますか?
- Qあなたは、今の社会・政治をどう思いますか?
- Q尊敬する人物を言ってください?
- Qあなたは、どんな本を愛読していますか?
- Q学校外での加入団体を言ってください?
- Qあなたの家(あなた)は、何新聞を読んでいますか?
- Qあなたは、元号や西暦表記についてどう考えますか?
(6)一方の性に限定しての質問
- Q今、つきあっている人はいますか?
- Q結婚の予定はありますか?
- Q結婚、出産しても働き続けられますか?
- Q何歳ぐらいまで働けますか?
(7)その他
- Q彼氏(彼女)はいますか?
- Q当社に知人がいますか?その人とはどういう関係ですか?
- Qなぜ大学に行かないのですか?
- Qタバコを吸ったことがありますか?
- Q血液型・星座は何ですか?
- Q短所はなんですか?
上記の質問を見て、何でダメなのか?と思われるものもありますよね。
聞き方の問題もあります。
また、なぜ聞くのかを明確に説明して行う必要もあります。
そうであるならば、必ずしも、上記に載っているから一律にNGとは言い切れないと考えます。
面接時に質問してよいこと、よくないこと
職員の募集の際、面接時にこのような事を聞いていいのか、という質問をよく受けます。会社からすると、仕事能力はもちろん、その人の価値観や人生上の目標なども含めて、いろいろなことを聞きたいと思います。
今後、ますます良い職員の募集が難しくなることは、容易に予想されることから、できる限り長く働いていただける方を採用したいためです。
そのようないろいろな要素の中で、最近、介護事業所の方が面接をする時に気にされている事は、精神疾患(特に、うつ病)にかかっているかどうかです。
現実問題、うつ病の方は増えており、休職として長期間休まれている事例も増えているからです。
事業所からすると、良い人材であっても、仕事ができなければなにもなりません。
新しい人を募集してもよいものか、それとも、復職を期待して、それまで、現有人材で何とかまかなうのか、悩ましい問題です。
また、仮に復職されても、以前のように働けるのかと、不安は尽きません。
従って、面接段階で聞きたいのだが、本当に聞いてもよいのか?との疑問が浮かぶのです。
法律的に、既往歴や現状の疾患を確認する事は禁止事項には含まれておりません。
法律上列記して禁止されている項目とは、人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地、思想及び信条、労働組合への加入状況、その他社会的差別の原因となるおそれのある事項です。
その一般的に、NGとされている具体的な質問事項は、次回に記載させていただきます。
介護・福祉事業所の顧問先様の忘年会に行ってまいりました
先日は、介護保険の訪問介護と障害福祉の訪問介護の事業所をされている顧問先様よりお誘いいただき、忘年会に行ってまいりました。
今年に開業したばかりなので、当然初めての忘年会なのですが、スタッフはもちろん、利用者様やお付き合いの業者の方など、総勢20名ほどでしょうか。
ビンゴやカラオケで大変盛り上がりました。
こちらの事業所は、開業からとても順調で、利用者の数がどんどん増えており、対応できなくなるくらいになっております。
開業して数カ月で、利用者獲得より職員獲得がより重要な経営課題となっております。
経営者をはじめ、職員への負担が大きくなっており、労務管理上の問題も生じかねません。
職員募集も、求人媒体はもちろん、経営者の知り合いに働きかけて、世間の事業所よりは応募は多い方だと思います。
訪問介護員は、当然、少なくとも初任者研修を受けている人でないとならないため、仮に、無資格者の方が面談に来られて、いい方ならば、会社の費用で初任者研修を受けてもらっております。
これからは、組織体制を構築する段階に来ております。
キャリアパス、賃金制度、資格制度、評価制度など、その会社の状況や規模に応じた、現実的な制度を導入して、よい職員の流出を食い止め、定着してもらえるような事業所になるために、早急に対応しなければなりません。
忘年会でもそのようなお話しを少しだけさせていただきました。
営業力と福祉精神にあふれた経営者のため、やりがいを感じます。
当事務所も、もっと介護知識や経験を仕入れて、質の高いサービスを提供してまいります。