介護職員の退職理由は”制度”にあった

職員が活き活きと働ける職場作り、地域No.1職員事業所になるための制度作りについて、日々の活動をつづっております。

脳・心臓疾患の長時間労働がある場合の労災認定基準

脳・心臓疾患の発病は、異常な出来事、短期間の過重業務、長期間の過重業務が要因になります。

 

(1)異常な出来事

 発症直前から前日までの間において、発生状態を時間的および場所的に明確にし得る異常な出来事に遭遇したことをいいます。

具体的には、「極度の緊張、興奮、恐怖、驚がく等の強度の精神的負荷を引き起こす突発的または予測困難な異常な事態」「緊急に強度の身体的負荷を強いられる突発的または予測困難な異常な事態」「急激で著しい作業環境の変化」をいう。

 

(2)短期間の過重業務

 発症に近接した時期(発症前おおむね1週間)において、特に過重な業務に就労したことをいいます。

過重な業務に該当するか否かは、「労働時間、不規則な勤務、拘束時間の長い勤務、出張の多い業務、交替制勤務・深夜勤務、作業環境(温度環境・騒音・時差)、精神的緊張を伴う業務」の負荷要因を考慮して、客観的かつ総合的に判断されます。

【短期間の過重業務】

・発症直前から前日までの間において、特に過重な業務に就労した

・発症前おおむね1週間以内に継続した長時間労働が認められた

・発症前おおむね1週間以内に休日が確保されていなかった

 

 

(3)長期間の過重業務

 発症前の長期間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したことをいいます。

過重な業務に該当するか否かは、(2)と同じ負荷要因から考慮されますが、このうち労働時間については、次の評価の目安が定められております。

【長期間の過重業務】

・発症前の6か月間すべてに渡って、1か月45時間以上の時間外労働があった

 (月45時間以内の時間外労働は、発症との関連性は弱い)

・発症前1ヶ月間に100時間以上の時間外労働があった

・発症前の2~6か月間のいずれかの期間において、1か月80時間以上の時間外労

 働があった

 

 

特に、長期間の過重業務として、発症前の6か月間全てに渡って1か月45時間以上の時間外労働があった場合とされておりますが、実際のおいてはが、とてもハードルが低いと思われる事業所も多いのではないでしょうか。

 

また、発症前1か月間に100時間以上の時間外労働があった場合、発症前の2~6か月間のいずれかの期間において、1か月80時間以上の時間外労働があった場合があります。

前回書きました精神疾患と比較しても、労働時間に関しては短い時間でも認定の可能性が高くなります。

 

個体的要因もあるので、もちろん長時間労働だけで判断されるわけではありません。

現実問題として、恒常的に1カ月45時間以内にすることが難しいようであるならば、1か月の残業時間が80時間以内とすべきと考えます。

精神疾患の長時間労働がある場合の労災認定基準

 

労災における精神障害の発病についての考え方は、精神障害は様々な要因で発病するということです。

そのため、一概に精神疾患(現在最もおおい精神疾患うつ病です)に入社後発病しからといって、労災認定され訳ではありません。

事故や災害の体験、仕事の失敗、過重な責任の発生、仕事の量や質の変化等の業務による心理的負荷、自分の出来事、家族や親族の出来事、金銭関係等の業務以外の心理的負荷、既往症やアルコール依存状況、生活態度等の個体的要因の3つが複合的に合わさって、精神疾患の労災なのかが判定されることとなっております。

 

労務管理において、認定基準の対象となる精神障害を発病している事、認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められる事、業務以外の心理的負荷や個体側要因を事業所が把握する、または、判断をするということは実務上非常に困難です。

ただし、労働時間に関しては判断できますね。

精神障害の労災認定要件には、今日は業務による強い心理的負荷が労働時間とどの様に関係するかについて考えてみたいと思います。

 

業務による強い心理的負荷に該当する特別な出来事が長時間労働とどの様に関わってくるかという事です。

特別な出来事が有ると認められると、それは「強」という扱いをされます。

そうすると労災認定される可能性が高くなります。

特別な出来事としての極度の長時間労働として「強」になる例として、発病直前の1か月におおむね160時間以上の時間外労働を行った場合、発病直前の3週間におおむね120時間以上の時間外労働を行った場合があります。

 

特別な出来事ではない出来事だが、それでも「強」になる例として、発病直前の2か月間連続して1月当たりおおむね120時間以上の時間外労働を行った場合、発病直前の3か月間連続して1月当たりおおむね100時間以上の時間外労働を行った場合があります。

 

また、その他の出来事と100時間以上の時間外労働を行った場合、2つが合わさって「強」になる可能性もあります。

 

 

このような基準からしますと、精神疾患と長時間労働の関連性は、およそ1か月当たり100時間以上の残業をしていて、うつ病になりましたと言われると労災認定される可能性が高くなるといえます。

 

有期契約者に対して、必ず行わなければいけない手続き3

前回の続きです。

 

これからは、特例対象者である

 

専門的知識等を有する有期雇用労働者(以下「高度専門職」といいます。)

定年に達した後引き続いて雇用される有期雇用労働者(以下「継続雇用の高齢者」といいます。)

 

のうち、実務上影響のある、「継続雇用の高齢者」について説明いたします。

 

労働局は計画届を提出する際、雇用管理に関する措置についての計画を記載します。

内容としては、

 

  •     高年齢者雇用推進者の選任
  •  職業訓練の実施
  •  作業施設・方法の改善
  •  健康管理、安全衛生の配慮
  •  職域の拡大
  •  職業能力を評価する仕組み、資格制度、専門職制度等の整備
  •  職務等の要素を重視する賃金制度の整備
  •  勤務時間制度の弾力化

 

と色々ありますので、事業所に最も適した措置を選択いたします。

高年齢者雇用推進者の選任もいいと思います。

高年齢者雇用推進者とは、高年齢者雇用安定法第11条に定められている努力義務で、高年齢者雇用確保措置を推進するため、作業施設の改善その他の諸条件の整備を図るための業務を担当する者として、業務を遂行するために必要な知識及び経験を有していると認められる者のうちから選任された職員のことです。

 

また、他には勤務時間制度の弾力化がありますが、これは嘱託規程を作れば良いです訳です。

例えば、短時間勤務、隔日勤務、フレックスタイム制ワークシェアリングの活用です。

通常、嘱託規程には、社会保険への加入が必要な、常勤職員の4分の3以上勤務するパターンとそれより短い日時で勤務するパターンを設定することが多いためです。

 

その他に関する措置の内容で、高年齢者雇用安定法第9条の高年齢者雇用確保措置として、65歳以上への定年の引き上げ、継続雇用制度の導入、希望者全員を対象、経過措置に基づく労使協定により継続雇用の対象者を限定する基準を利用しているのかにチェックをして、労使協定があればそれを添付して、更にその部分の就業規則を添付することとなります。

 

 

これまで書いてきましたとおり、平成25年4月1日施行の労働契約法の改正によって、今後、事業所として、何らかの措置をとらなければなりません。

その方法としては、

  • 期契約者の通算契約期間を5年以内で設定して、一切例外を認めないとの方針を決めてしまう
  • 通算5年以内に決めるわけではないが、仮に、通算5年を超えて無期契約職員になっても良いという方針を決め、選択をした人は、正規職員又は無期転換職員にすると

 

いう選択肢があります。

正社員ではなく、無期転換職員という上記2を選択した事業所は、無期転換職員就業規則を新しく作る必要があります。

 

有期契約者に対して、必ず行わなければいけない手続き2

前回の続きです。

 

実務上、影響が多きいのは、定年に達した後引き続いて雇用される有期雇用労働者(以下「継続雇用の高齢者」といいます。)です。

定年の時点が、平成27年4月1日以後、平成25年4月1日以後から平成27年3月31日、平成25年3月31日以前のいずれであっても特例が適用されます。

ただし、通算契約期間の算定対象が平成25年4月1日に開始する有期労働契約に限られる事から、特例の適用も平成25年4月1日以降に限られます。

 

定年が平成27年4月1日以降の場合は、当然その定年日後から5年の対象となります。また、平成25年4月1日から平成27年4月1日に定年がある場合でも、その定年日後から起算して5年です。

 

逆に、平成25年4月1日より前に定年になった人の場合、平成25年4月1日より以前は通算の対象にはなりませんので、平成25年4月1日以降に5年経っても転換権は生じないこととなります。

 

  • 専門的知識等を有する有期雇用労働者(以下「高度専門職」といいます。)
  • 定年に達した後引き続いて雇用される有期雇用労働者(以下「継続雇用の高齢者」といいます。)

 

である方々は、特例の対象ではありますが、無条件に対象外になるわけではありません。

一定の手続きが必要です。

 

手続きの方法は、

 

  1. 無期転換ルールの特例の適用を希望する事業主は、特例の対象者に対して、能力が有効に発揮されるような雇用管理に関する措置についての計画を作成します。
  2. その計画を労働基準監督署都道府県の労働局に直接提出します。
  3. 提出された労働局は、事業主から申請された計画が適切であれば認定を行います。
  4. 認定を受けた事業主に雇用される特例の対象労働者(高度専門職や継続雇用の高齢者)について、無期転換ルールに関する特例が適用されます。

 

注意点として、この様に特例が適用された場合には、有期労働契約の締結・更新の際に、無期転換の申込み権が無いという事が分かるように、対象労働者に、労働条件通知書またが労働契約書にて明示する必要があります。

具体的には、労働条件通知書またが労働契約書へ、の契約期間の有期雇用特例措置法による特例対象者の場合という項目を追加する必要があります。

この書類にて、定年後引き続き雇用される期間にチェックを付けると、あなたは特例の対象者ですよという事が分かります。

 

無期雇用転換権が発生するのは、平成30年4月1日以降なので、それまでに、この手続きは済ましておかなければなりません。

有期契約者に対して、必ず行わなければいけない手続き1

平成25年4月1日以降、締結または更新した日から契約を繰り返すことによって、通算5年を超えるようになった場合、労働者からの申し入れによって、無期雇用契約に転換されすこととなっております。

このルールは、当初、すべての有期労働解約者が対象でした。

仮に定年が65歳の会社で、その後、嘱託職員として1年ごとに契約を繰り返していた場合、5回目の契約を更新した時点で通算5年を超えるため、その時点、つまり70歳で無期転換職員への申し込みが可能となるとのことです。

 

すでに定年は65歳なので、70歳で無期雇用転換された方は何歳まで働くのでしょうか?

当時から強い疑問を持っておりました。

そこで、労働契約法の平成25年4月1日改正に対して、平成27年4月1日施行の特別措置法が施行され、有期契約者の無期労働契約への転換について、

  • 専門的知識等を有する有期雇用労働者(以下「高度専門職」といいます。)
  • 定年に達した後引き続いて雇用される有期雇用労働者(以下「継続雇用の高齢者」といいます。)

について、その特性に応じた雇用管理に関する特別の措置が講じられる場合に、無期転換申込権発生までの期間に関する特例が適用されることとなりました。

 

高度専門職の年収要件と範囲としては、

 

【年収要件】

事業主との間で締結された有期労働契約の契約期間に、その事業主から支払われると見込まれる賃金の額を、1年間当たりの賃金の額に換算した額が、1,075万円以上であることが必要です。

所定外労働に対する手当や労働者の勤務成績等に応じて支払われる賞与、業務給等その支給額があらかじめ確定されていないものは含まれないものと解されます。

 

【高度専門職の範囲】

次のいずれかにあてはまる方が該当します。

  1. 博士の学位を有する者
  2.  公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、社会保険労務士不動産鑑定士技術士または弁理士
  3.  ITストラテジストシステムアナリストアクチュアリーの資格試験に合格している者
  4.  特許発明の発明者、登録意匠の創作者、登録品種の育成者
  5.  大学卒で5年、短大・高専卒で6年、高卒で7年以上の実務経験を有する農林水産業鉱工業・機械・電気・建築・土木の技術者、システムエンジニアまたはデザイナー
  6.  システムエンジニアとしての実務経験5年以上を有するシステムコンサルタント
  7.  国等によって知識等が優れたものであると認定され、上記①から⑥までに掲げる者に準ずるものとして厚生労働省労働基準局長が認める者

 

となっております。

 

このような方は、滅多におられないと思われますので、実務上はあまり関係ありません。

重要なのは、「継続雇用の高齢者」です。

 

次回に続きます。

有期労働契約の雇止めについて2

有期労働契約は、基本的に、恒常性、基幹性の労働を前提としていません。

ですので、雇い止めをする場合は、恒常性、基幹性のある仕事をして場合は、認められない可能性が高くなるかもしれません。

 

例えば、試用期間として3か月の有期契約を結んで、本採用で改めて4か月目から無期契約を結び直す事業所も相当多いです。

採用から3か月間は契約社員とし、4カ月目から正規職員とするパターンです。

 

話しはずれますが、社会保険の被保険者として強制的に加入する条件として、

  • 契約上の1週間の労働時間が通常の労働者(正社員)の概ね4分の3以上であること
  • 契約期間が2ヶ月を超える、または2ヶ月を超える見込みがあること

の2つが満たされていることにあることから、採用から試用期間として2か月の有期契約を結んで、3か月目から本採用として無期契約を結び直す事業所も多いです。

最初の2カ月は社会保険に加入せず、3カ月目から加入することで、社会保険料の節約になるためです。

 

脱線しましたが、当事者の言動という点も雇い止めが認められるかどうかは、重要な要素です。

3か月間の試用期間として有期契約を結ぶが、たいていの人はよほどの事がない限り本採用されますよ、という話しを最初にされていたり、その職場でほとんどの方が本採用されたりしている実態があると、雇い止めは認められない可能性が高くなります。

 

 

また、反復更新の回数、勤続年数も大きく影響してきます。

例えば、形式的に1年や半年おきに更新して10年以上働いているパートさんがおられる事業所もあると思います。

このような場合、を雇い止めしようとしても、やはり認められない可能性が高いです。

形式的に、書類上のやりとりをしているのみで、更新時に、するのかしないのかを、きちんと吟味して結論を出している訳ではないためです。

従って、他の同様な職員の更新状況がどうなのかも影響されます。

 

この様な事が判断基準となり、雇い止めが認められるか否かが決まってきます。

逆に、非基幹的業務で臨時的な仕事をしていて、当事者が契約期間満了によって終了すると明確に認識している、または、更新手続きが厳格に行われており、判断基準によって、あまり更新されている職員も多くないという場合には認められといえます。

 

その他のケースとして、

 

業務内容が恒常的であり、かつ、更新手続きが形式的、雇用継続を期待させる使用者の言動が認められ、同様の地位にある労働者について過去に雇い止めの例が少ない場合は、雇い止めは認められない場合が多いです。

 

業務内容が恒常的で更新回数が多いが、業務内容が正規職員と同一ではなく、同様の労働者に雇い止めの例がある場合は認められる可能性がそれなりにあります。

 

特に、法律上の理屈としては、上記のとおりです。

中小の事業所にとっては、理屈通りできる訳ではないので、実際の現場との整合性をどのようにとっていくのか、が課題となります。

法律とは違う分野での人事制度を効果的に取り入れる必要があります。

有期労働契約の雇止めについて

有期労働契約は、使用者が更新を拒否したときは、契約期間の満了により雇用が終了します。

これを雇い止めといいます。

実際問題、契約期間満了だというだけで、雇止めが果たしてスムーズにできるのか?ということが起こりえます。

例えば、今月末が契約期間満了なので次回は契約の更新はしませんと、いう形式上の点だけで、この雇い止めが通用するのかどうか?ということです。

 

労働条件通知書または労働契約書において、“更新する場合が有り得る”という条件設定をされているケースの場合(このケースが最も多いと思われます)、更新するかどうかは、条件次第だという事になります。

どのような条件を設定して、その結果どうだったか、で判断することとになります。

しかし、実務上では、そもそも、そこまで明確に条件設定されているケースはまれです。

 

一般的に、判例法理では、有期労働契約が過去に反復して更新されており、契約期間満了時に契約を更新しない事(雇い止め)が、無期労働契約の労働者に解雇の意思表示をする事により契約を終了させる事と社会通念上同視できる場合、労働者が有期労働契約の期間満了時に契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由がある場合は、雇い止め法理が働いてその雇止めは無効になります。

 

 

経験上、労働法はそもそも労働者を保護する法律ですから、いったんトラブルになると、会社はより説明が求められます。

どちらの言い分もあり得るなあ、と思われる場合は、会社の方が不利だと考えて間違いないです。

誰が見ても、明らかに労働者の方が悪いと思われる場合しか勝てない、と思っていた方がよいです。

 

そもそも、有期労働契約は、被基幹的で臨時的な業務だから、期間を限って契約するものです。

でも実際は、当たり前のように有期契約をされていると思います。

当事務所でも、顧問先のお客様に対して有期労働契約をすすめることもよくあります。

従って、有期労働契約基本は、契約の更新をしない事が大前提なのです。

 

次回に続きます。